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懐かしきベルギー続編 [海外雑記]

  車を路肩に寄せて駐車させ、高速から周りを見渡すと、遥か遠くに教会の塔が見えたので、助かったと確信し近くの出口から高速を降り、教会の塔を目指して車を走らせました。フランス教会1.JPGところがしばらくすると、なんとガソリンが切れエンジンが止まってしまいました。しかたなく車を降りて周りを見ると、見渡す限りの田園地帯、人も居なければ車も走ってない。絶望のどん底に一気に蹴落とされました。』

そう云って、困りましたよと言う顔をM君に向けると、

『それで、どうしました続けて。』とM君が促す。

『歩きました、遠くに見える教会の塔を目指して。心の中では“神様お助けくださいって”祈りながら、塔を目指してただひたすら歩きました。普段は神様に祈ったことなど無いのに。』と言って私がテレ笑いをすると、

M君が『困ったときの神頼みですね。』と笑った。

 『30分ぐらい歩いたところで、小さな街が見えてきました。徐々に心の中に安堵感が広がってきました。街の入り口にガソリンスタンドが見えたんです。助かったと心の中で叫んでガソリンスタンドへわき目も振らず歩きました。』

 M君はうなずき、『よかったですね、本当に。でも言葉通じましたガソリンスタンドで、フランスですよねその街? フランス人は英語知っていても、しゃべらないって言いますからね。』と聞いてきた。

『そうだね、フランス人はプライドが高く、母国語を世界一美しい言葉と思っていますからね。でも昔はともかく、最近はフランス人も英語を話しますよ。』と私は答えて話を続けた。

 フランス田舎の夕日.jpg『英語で喋っているつもりだが、実際は何を喋っているのか自分でも分かりませんでした。身振り手振りも交えて必死に自分が陥っている窮地を伝えたところ、何とか状況を理解してくれたガソリンスタンドの店員が、ゴミ箱に捨てられたポリ容器を拾いガソリンを入れて渡してくれました。私は何度も何度も“Merci,Merci”と頭をさげ、2リットルほど入ったポリ容器を抱え、再び来た道を車に向かいすたすたと歩きはじめました。ふと見渡せば、緩やかな丘陵の道は夕日が沈みかけていました。トラブルが無ければ、すばらしいフランスの田園風景でしたが、私には景色を楽しんでいる余裕など有りませんでした。道は街灯など無く、日が沈んだら暗黒の世界に変わるのが想像できました。まずい、そう思うと同時に歩く速度をさらに早め、車目指して再び必死に歩きました。』

私は、その時の状況を思い出すように目を天井に向けた。

『大変な目にあいましたね。』とM君。

『ええ、あの時の心細さは今でも覚えていますよ。』と云って、私はコップに残ったビールを再びゴクリと飲んだ。


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